日本航空(JAL)のジャンボ機の墜落事故は12日、発生から39年がたった。単独の航空機事故としては世界最悪の乗客・乗員520人が亡くなった事故の遺族らは、現場となった御巣鷹の尾根(群馬県上野村)に朝から登って慰霊した。
英国在住のバイオリニスト、ダイアナ湯川さん(38)は、初めて長女のエルシーさん(6)、次女ルミさん(4)を連れ、父の昭久さん(当時56)の墓標を訪ねた。出産やコロナ禍を経て9年ぶりの慰霊登山だ。
住友銀行常務などを務めた昭久さんは銀行マンとしてロンドンを訪れた際、母ベイリーさんと出会った。その両親から生を受けたのは事故1カ月後のこと。発生時はまだ母のおなかの中にいた。音楽好きだったという父の姿は、母たちから聞いて知った。
自分の娘たち2人にも父のことを伝えたい。その思いで、夫ダンさん(39)も含めた家族4人で御巣鷹の尾根を登ることにした。
「いただきます! グランパあき」
昭久さんの墓標の前に着き、家族そろってミカンやおにぎりをほおばった。昭久さんの地元、和歌山県新宮市の近くで採られた石から職人につくってもらった灯籠(とうろう)も組み立て、飾った。この灯籠は対になっており、もう一つは英国の自宅にもうすぐ届く予定だ。
出産前に何度もこの場所を慰霊登山してきたが、母としてはこの日が初めて。「以前は重い気持ちで登ることも多かったけれど、今日は家族みんな楽しく過ごせて、とても幸せでした。やっと父に娘を紹介できた。父も孫に会えて幸せだったんじゃないかな」(中村建太)