Smiley face
写真・図版
練習でノックをする小松大谷の江口魁宝さん=2024年7月31日分、石川県小松市津波倉町、小崎瑶太撮影
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 阪神甲子園球場の土は「思ったよりふわっとしていた」。第106回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高野連主催)に石川代表として出場している小松大谷の江口魁宝(かいほう)さん(3年)は勝利した初戦での感触をそう振り返る。記録員としてベンチ入り。ただ数カ月前まで、背番号をつけてプレーする自分の姿を思い描いていた。

 小学1年から本格的に野球を始めた。中学では硬式チームの投手としてプレー。「地元の選手で星稜を倒して、甲子園に行きたい」と小松大谷に入学。1年生大会や2年秋の北信越地区大会でベンチ入りした。

 突然の耳鳴りに襲われたのは今年3月。修学旅行から戻ると「左耳がキーンとなった。飛行機に乗ったせいかと思ったけど治らなかった」。頭痛にも悩まされ、医師からは「メニエール病の症状のようだ」と伝えられた。

 特に天候が悪いと体調を崩す。練習も休みがちになり、春の県大会では記録員としてベンチに入った。チームへの影響を考えて6月上旬、グラウンドを見下ろす教員用の部屋で、西野貴裕監督に「選手コーチを考えている」と申し出た。選手をサポートする役回りだ。

 西野監督は、選手としての江口さんの存在感を評価していたが、決断を受け入れた。練習では裏方にまわる選手コーチ、試合ではベンチでスコアをつける記録員として選手を支える日々が始まった。

 夏の石川大会が迫るなか、練習でノックをし、1、2年生のウェートトレーニングの指導などにもあたった。志田慶歩部長は「こちらが2、3言うと、先を予測して10のことをやってくれる」と信頼を寄せる。

 選手たちの江口さんへの思いも深い。東野達(いたる)主将(3年)は「感謝しかない」と話す。午後1時からの練習の日に午前8時に学校に来て準備をしてくれたという。「小学校からやってきて、(転身は)自分だったらしんどいと思う」と感じている。

 エースの西川大智投手(3年)は石川大会開幕前、スマートフォンのカバーに「魁宝を甲子園に連れていく」と書いて江口さんにプレゼントした。

 その大舞台でまず1勝し、次は14日予定の大阪桐蔭戦。「勝ってほしいという思いをみんなに伝えて、サポートしていきたい」(小崎瑶太)

共有