(14日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 小松大谷3―0大阪桐蔭)
3万6千人の観衆で満員の甲子園。春夏計9回甲子園を制している大阪桐蔭には一塁側、三塁側にかかわらず試合前ノックから歓声があがる。小松大谷の石浦慈人選手(3年)は「逆に自分たちを応援してくれとる」と思ってグラウンドに飛び出した。
50メートル5・96秒の俊足。初回、死球で出塁するとすかさず二盗を決める。打撃でも積極性をみせ、三回に中前安打を放った。
互いにゼロを並べて迎えた七回。青く染まった三塁側アルプススタンドの声援を受けながら、1死一、二塁の好機で、狙っていた初球の直球をはじき返す。「転がせば足が速いからミスを誘える」。その思惑通り、二塁から一塁への送球が乱れて二塁走者の山本晴輝選手(3年)が生還。先制点になった。
「ゲッツーにならなくてよかった」と安堵(あんど)しつつ、「このまま流れよくいってほしい」と願った。さらに相手の暴投で三塁に進み、3番田西称(とな)選手(2年)の適時打で2点目の本塁を踏んだ。
守備では、初戦の二塁からこの日は右翼にまわった。前夜に宿舎で告げられたという。春の県大会以来だったが「そこまで怖くはなかった。足を使って走ったり思い切り投げたりできて、内野より得意」という。
三回2死三塁の場面で、右翼に伸びてきた打球を「つかんだ」と思ったがグラブではじいた。「やばい!」。でも前を見たらそこに球があった。「手を出したらとれました」
先制点を決めた直後の七回も、飛球をスライディングで好捕。大阪桐蔭の反撃の芽を摘んだ。東野達(いたる)主将(3年)も「今日は特によかった。ねばってくれた」とたたえる。
大歓声を浴び続けた一戦だった。「声を出していたけれど、あまり通らなかった。次も応援がすごいと思う。声でつないで、勝ちたいと思います」(小崎瑶太)