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被爆者・被爆体験者団体との面会が終わった際、訴えを続けた平野伸人さん(手前右、後ろ姿)に語りかける岸田文雄首相=2024年8月9日午後1時10分、長崎市、小宮路勝撮影

 自民党総裁選に立候補せず、退陣する意向を14日に表明した岸田文雄首相。その5日前、首相は原爆に遭った人々と面会し、ある約束をしていた。

 長崎原爆の日の8月9日、JR長崎駅近くのホテル。岸田首相や厚生労働相、外相らが出席した会合の場に怒声が響いた。

 「被爆体験者は被爆者じゃないんですか」

 首相に向かって、白髪の男性が叫ぶ。「弱い人の声が聞こえないんですか」。職員らが止めに入っても発言は続いた。

 この日、長崎で原爆に遭いながら、国が線引きをした「被爆地域」の外側だったため被爆者と認められていない「被爆体験者」らが救済を求め、岸田首相と初めて面会した。

  • 【そもそも解説】被爆体験者とは? 置き去りにされた長崎の被爆者

 会合の最終盤、岸田首相に対して声をあげたのは支援者の男性だった。

 長崎市の被爆2世で、元小学校教諭の平野伸人さん(77)。岸田首相は、平野さんの元に歩み寄り、何かを話しかけ、握手をして立ち去った。

歩み寄ってきた首相、「筋書きはなかった」

 記者の座る場所からは、ふた…

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