(16日、第106回全国高校野球選手権大会3回戦 石橋0―5青森山田)
約5カ月前は甲子園の外野ファウルゾーンにいた。あのとき、イスに座って見ているだけだったマウンドで、青森山田の2年生右腕・下山大昂(だいこう)が躍動する。
140キロ前後の直球に大きく曲がるスライダーを交え、内外角を突く。三回2死一、三塁で迎えた4番入江祥太には、外角直球を続けて2球で追い込む。ここで、打者心理に思いを巡らせた。「『スライダーで三振を取りにくる』って考えると思った」。内角直球で見逃し三振を奪う。涼しげな顔でベンチに戻った。
チームは今春の選抜大会で8強入り。同級生2人を含めた4投手がベンチにいた。自分はボールパーソンだった。「ベンチに入りたい。甲子園で投げたい」
選抜を終えて青森に戻ると、練習後に残って毎日30本、1人で黙々と外野のポール間をダッシュし続けた。すると、直球は最速142キロ、平均球速も数キロ上がり、公式戦でも先発を任されるようになった。そして、この夏、背番号「11」を手にした。
プレー中は「ズル賢い性格」になると言う。打者の狙いを逆手に取るのはもちろん、「わざと首を振る」サインも自分で提案した。同級生右腕の菊池統磨も「牽制(けんせい)も相手の嫌がりそうなところで入れるし、間合いもうまい」と認める。
「度胸もある子」と兜森崇朗監督が認める右腕は、毎回走者を許しながらも要所を締めた。
監督から当初言われていた3回を大幅に超え、6回を投げて無失点。「初めての甲子園で緊張感はあったけど、始まれば楽しかった」。試合後、素直に喜んだ。(大坂尚子)