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籃胎漆器と田中麗奈さん=2024年1月10日午後2時59分、東京都渋谷区、相場郁朗撮影

 俳優の田中麗奈さん(44)が、普段から愛用しているお盆と3色の箸がある。

 編み込んだ国産の真竹に漆が塗り重ねられており、赤や青といった鮮やかな色合いが映える。

 故郷である福岡県久留米市の伝統工芸品「籃胎(らんたい)漆器」だ。数年前に地元の友人から贈られ、食卓で使っているという。

 「すごく軽くて扱いやすい。手触りもよく、日常的に使いやすいんです」

 籃胎は「竹かごを胎(はら)む」の意味とされる。竹で編んだ素地に漆を塗り重ね、磨きあげて仕上げる。お盆や皿、箸など用途は広く、深みのある光沢が特徴だ。

 久留米藩の御用塗り師の流れをくむ人たちが明治期に誕生させ、福岡県の筑後地域では「一家に1枚は籃胎漆器のお盆がある」と言われていたほど。田中さんにとっても、籃胎漆器は「小さいときから日常の中で当たり前にある存在でした」という。

 田中さんは高校生のころに出演したサントリーの清涼飲料水「なっちゃん」のCMで、全国的に知られる存在になった。地元の伝統工芸品の良さに気づいたのは、拠点を東京に移してからだったという。

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籃胎漆器と田中麗奈さん=2024年1月10日午後3時2分、東京都渋谷区、相場郁朗撮影

 「東京で暮らすようになって、改めて故郷にしかないものを俯瞰(ふかん)で認識するようになりました。そこから、籃胎漆器を自分も生活に採り入れてみよう、と。自分でも買って使っていくことでどんどん愛着がわいていくし、やっぱり子どものときに身近にあったものを使うことで、安心感があります」

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 しかし、地元で愛されてきたそんな工芸品がいま、苦境に立たされている。

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