4月7日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆印は共選作です。
馬場あき子選
「勇気ある国際的な女性賞」五ノ井里奈さんに贈るのは日本ではなくアメリカだった(観音寺市)篠原 俊則
ロバに乗り通学する子のかたわらを静かに流れゆくナイル川(東京都)増田 麻美
☆野うさぎをリュックサックに隠してるような弁当箱のぬくもり(奈良市)山添 聖子
アロワナがジャンプするらし真夜目覚めその音聴けば寂しき音に(川崎市)新井美千代
☆一斉に楽譜をめくるコーラス隊春がそこからパッと始まる(富山市)松田 わこ
寒がりの猫には服を着せずして犬には着せる飼い主のエゴ(可児市)田上 勇嗣
隆起せし沿岸覆ふ波の花たかく低く存分に舞ふ(加賀市)敷田千枝子
Bランチ社食のメニューはちらし寿しはにかむようなミニ桜もち(富山市)松田 梨子
昭和区の神社の亀は鳴くという社務所で売られる餌をまくとき(名古屋市)山守 美紀
二月半過ぎて今なおそのままの倒壊家屋を包む豪雪(五所川原市)戸沢大二郎
【評】第一首は日本でまだタブー視されている性被害を実名で訴えた五ノ井さんの国際的な受賞。下句に作者の思いが強い。第二首は長大なナイル川流域のくらしの雰囲気が童画風な景にある。第三首は野うさぎのぬくもりがいい。
佐佐木幸綱選
塙保己一(はなわほきいち)…