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原告代理人の村松暁弁護士(左)はサカイ引越センターが社員に渡した「精算同意書」を手に持ち、「残業代を不当に放棄させるものだ」などと訴えた=2024年8月27日午後2時21分、大阪市北区、山本逸生撮影

 引っ越し大手「サカイ引越センター」(堺市)の社員ら6人が、同社に未払い残業代など計約3600万円を払うよう求めて27日、大阪地裁に提訴した。指示された仕事量をこなす作業員兼運転手の手当を「出来高払い」とする給与体系によって、残業代を低く抑えていると訴え、改善を求めている。

 原告は、大阪や京都などの5府県の社員と元社員。訴状などで、同社は引っ越し件数や1件あたりの売り上げなどに応じた「業績給」の手当を支払ってきたが、作業員は指示に従って決められた仕事をするしかないと指摘。実態に合わない出来高払いによって、残業代の割増率は月給制の5分の1に抑えられ、不当だなどと主張した。

 同様の訴訟は、元社員3人が2019年に東京地裁立川支部に起こし、支部、東京高裁とも原告側の請求を認め、サカイ側が上告している。

サカイが配った「精算同意書」とは

 原告側によると、同社は東京訴訟の一審で敗訴後、給与体系に関する説明会を各地で開き、社員らに「精算同意書」を配ったという。この文書は業績給制度を変える方針を示した上で、「過去1年の範囲の精算金」を払うことで、それ以前の「債権債務はない」と確認する内容だった。

 会見した原告弁護団の村松暁弁護士は、同意書について「未払い残業代は3年分請求できることも説明せず、1年分に限った支払いで請求権を放棄させるもので無効だ」と指摘した。弁護団長の小林克信弁護士は「最大手のサカイを模倣する業者がいるかもしれない。出来高払いの悪用はいけないと知ってもらいたい」と話した。

 同社は提訴について、「訴状が届いていないので回答を差し控える」とコメントした。(山本逸生)

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