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 高野山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」が世界遺産に登録されて20周年になるのを記念し、和歌山県高野町の高野山霊宝館で、大宝蔵展「高野山の名宝」が開かれている。

 展示の目玉は、鎌倉時代を代表する仏師、運慶の作とされる国宝「八大童子立像」のうち4体。壇上伽藍(がらん)にある不動堂の本尊だった不動明王坐像(ざぞう)を守る役割を負う童子の立像の中でも、凜々(りり)しい顔立ちで人気なのが、リーダー格の制多伽(せいたか)童子像という。4体とも彩色を施された木造の彫刻で、両眼には水晶の板がはめ込まれ、生き生きとした表情をしている。

 矜羯羅(こんがら)童子は、巻き毛のおかっぱ頭で柔和な表情。親しみやすさはピカイチだ。「左足の親指が上を向いており、一歩踏み出そうとしていることにも注目してみてください」。霊宝館の大森照龍館長はこう話す。「制多伽童子も、腰のひねりで、今にも動き出しそうなたたずまいを表現している。静の中に動があるのが運慶の作品の特徴です」

 企画展「怖い?知りたい?地獄・極楽の世界」も同時に開催中だ。現世で悪い行いをした人が死後に地獄に落ち、獄卒の鬼から責め苦を受ける様子をリアルに描いた絵画や、はるか西方にあるとされ、苦しみがなく楽しみばかりの世界である「阿弥陀仏の浄土」のイメージが展示されている。いずれも仏教の教えを説く際に活用されたものという。

 前期は9月1日まで。後期は同3日から10月14日まで。会期中無休。拝観料は一般1300円など。問い合わせは霊宝館(0736・56・2029)。(大野博)

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