Smiley face
写真・図版
出土品の説明を受けるバスツアーの参加者=2024年7月30日午前10時18分、青森県三沢市、鵜沼照都撮影
  • 写真・図版

 米軍基地で知られる青森県三沢市には、実は100カ所を超える縄文遺跡がある。ほとんど知られていない文化的資産を学校教育の現場で活用してもらおうと、このほど初の「三沢縄文バスツアー」が市内で行われた。

 企画したのは市教育委員会学校教育課。遺跡を巡るのではなく、出土した遺物の保管場所を訪問するものだ。7月末に実施し、市内の小中学校の教職員13人が参加した。

 市内には埋蔵文化財包蔵地(遺跡)が128カ所確認されている。時代の古い順に旧石器2、縄文115(うち22は米軍基地内)、弥生20、奈良37、平安54などとなっている。

 最も数の多い縄文遺跡は「早期(1万1千~7千年前)」が44カ所、「前期(7千~5千年前)」が63カ所、「中期(5千~4千年前)」と「後期(4千~3千年前)」は、各42カ所ある。

 「野口貝塚」からは北海道・北東北で最古級となる縄文早期中葉の貝塚が出土。「平畑(3)遺跡」からは市内初となる5千年前の集落跡が見つかるなど、特徴的な遺跡も多い。

 しかし、三内丸山遺跡のように世界遺産に登録されている遺跡はなく、市や県、国から文化財指定を受けている遺物も少ない。多くの発掘調査が道路や建物などの開発行為に伴い行われていて、発掘記録は残されるが、遺跡まで保存されるケースはまれだ。市の文化財保護担当者は「存在しない、イコール価値が低いと誤解され、市民の認知度も低い」と話す。

 一方で、出土した遺物は「平畑(3)遺跡」だけでも総重量3トンになるなど大量にあり、廃校を使った保管場所では連日のように洗浄や整理、復元の作業が行われている。今回のバスツアーではこれらの「隠れた資産」を学校の授業で最大限に活用してもらうため、まず教職員に実態を知ってもらう狙いがあった。

 参加者は保管されている多数の遺物を見て回り、復元作業などの説明を受けた。バスツアーに参加した教諭は「縄文の遺跡や遺物がこんなにあるとは知らなかった。工夫次第で授業などに活用できそうだ」と話していた。(鵜沼照都)

共有