4人の孫に囲まれ穏やかな日々を送っていた男が、「長男の妻」に対する殺人未遂の罪に問われた。定年まで公務員として勤め、家事や子育てもこなしてきたのに、なぜ凶行に向かったのか。
3月8日、東京地裁の法廷。グレースーツのジャケットのボタンを留め、眼鏡をかけた被告の男(69)は、落ち着いた様子で出廷した。
被告は2022年7月に東京都内の駐車場で、長男の妻(当時39)の首などを折りたたみ式ナイフで刺して殺そうとした、などとして起訴された。
長男夫婦には、被告の孫である当時9歳と3歳の娘がいた。
被告は起訴内容への認識を問われ、「私の行為に間違いありません。大変申し訳なく思っております」と述べた。
何があったのか――。
孫を愛し、料理や旅行も
検察側、弁護側の主張や法廷での証言などによると、被告は高校卒業後、約40年間にわたり地方公務員として働いた。定年後も学校や区役所などで勤務し、「70歳までは働くつもりだった」という。妻は15年以上前から病を患っており、料理や掃除、洗濯などは主に被告が担ってきた。被告の長男と長女には、それぞれ2人の子がいた。
「じじ」。被告をそう呼ぶ孫らは、毎週のように家に遊びに来た。被告は料理を作ったり、近くの公園で自転車の乗り方を教えたり。スキーや海、川にも連れて行った。
証人として出廷した被告の長女は「孫というよりは、自分の子のようにかわいがっていた」と振り返った。
そんな日々が変化したのは、21年1月だった。
長男夫婦にトラブルが生じ…