球審からアウトのコールを告げられた瞬間、ひざから崩れ落ちた。グラウンドに突っ伏したのは、選手だけではない。
「あと0.1秒……。紙一重のところだった」
神村学園(鹿児島)の監督、小田大介(42)は目に涙を浮かべ、声を詰まらせた。
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第106回全国高校野球選手権大会の準決勝で関東第一(東東京)と対戦した。1点を追う九回2死一、二塁。代打・玉城功大(3年)の打球は二遊間を抜けて中前へ転がった。三塁コーチは腕をぐるぐる回した。
「完璧なスタートだった」という二塁走者の岩下吏玖(3年)が三塁を蹴り、同点の本塁を狙った。
関東第一の中堅手から矢のようなノーバウンド送球を受けた捕手が、頭から滑り込む岩下にタッチする。球審の右手が挙がった。劇的な形で、初優勝を目指した神村学園の戦いは終わった。
「あそこは回すべきだと私は思う。(三塁コーチは)よく回してくれたし、(走者も)よく走ってくれた。関東第一の(中堅手の)子も、よくあそこで投げ切った。お互い、すごくいいプレーだった」
小田は双方の選手に賛辞を送った。
「熱血漢」と評するにふさわしい。得点が入るたび、ピンチを乗り切るたびに、ど派手なガッツポーズを披露する。
披露するというより、体が勝手に動くのだという。「あんなに頑張っている子たちが大舞台で活躍したら、うれしくてたまらないんですよ。思わず出てしまう」。選手と一緒に、いや、選手以上に喜んでしまうのだ。
自らを「野球バカでしょう」と言い切る。新チームが始まった昨秋、九州大会準決勝で熊本国府に敗れ、各地区の優勝校が出場する明治神宮大会を逃した。
神宮大会の前日、「(九州大会の負けが)悔しすぎて」1人で飛行機に乗って東京に飛んだ。神宮球場のバックネット裏のチケットを買うと、食事も取らずに朝7時半から夜8時半まで、ひたすら試合を見続けた。「少しでも選手に生かせることはないか。一流たちから野球を学びたかった」
現役時代は投手。「父は、『…