穏やかで心優しいお医者さんが、動物たちと繰り広げる話が人気の絵本「アントンせんせい」。中国で異例の人気となり、シリーズ4冊の累計は137万部を突破した。何が中国の人たちの心をつかんだのか。
「アントンせんせい」の作者は、絵本作家の西村敏雄さん。日本では2013年に1作目が講談社から出版された。白衣を着て、左右にモジャモジャの毛が生えた髪形がアントンせんせいのトレードマークだ。
1作目では、のどを痛めたニワトリ、あごが外れたワニなど様々な動物たちが病院を訪れる。丁寧に診察するうちに突然アントンせんせいが倒れてしまい、動物たちがびっくりするという展開だ。
中国では、翌14年に出版。当初から人気があったが、23年にソフトカバーで4冊をセット販売したところ、爆発的にヒットした。
ハードカバーで1冊33.5元(約700円)、セットは4冊で118元(約2480円)。中国では近年、お得感のあるセット販売が人気で、1年間でセットだけで15万5千セット(62万部)売れた。ハードカバーとも合わせ、累計販売は137万3千部にのぼる。講談社元社員の劉岳(リュウガク)さん(62)は「10年でこの数字は考えられない」。
人気の背景の一つには、中国の出版事情があるようだ。
中国に「絵本」はなかった?
中国では、かつて本は高級品…