兵庫県尼崎市の美容室に、95歳の美容師がいる。68歳と66歳の娘2人とともに、明るくにぎやかに客をもてなす。「どんなことがあっても、明るく笑って一生懸命に生きる」。16歳で一人沖縄から本土に渡り、美容師一筋で小さな家族を守り抜いてきた。
「フレッシュ美容室」は尼崎市南塚口町の園田学園女子大学の向かいにある。14坪の店に座席が三つ。店の名前は当時の人気ラジオ番組のタイトルにあやかった。
金城末子(きんじょうすえこ)さん(95)がここに店を構えて45年になる。ともに美容師の長女の徳田英子(ひでこ)さん、次女の金城美智江さんと3人で客を迎えてきた。
美容師歴は70年を超える。7年前に次女に経営を譲ったが、それまで80歳を過ぎても店に立ち、手際よくカットやパーマを施した。いまも成人式の着付けは手伝う。「まだまだ現役や」と長女の英子さんは言う。
客は赤ちゃんから98歳の女性まで。親子3人、接客はにぎやか。「暗いとこには虫もよってけえへん、みんな明るいとこが好きやねんで」。鏡越しに客の悩みを聞き、相談に乗った。
客からは「先生」「お母さん」と呼ばれる。店にいなくても、壁に掛けた着物姿の末子さんの写真に「ありがとう」と手を合わせて帰る客がいる。「まだ生きてんのに」と娘2人が笑う。
末子さんも、明るく笑うことで人生の荒波を乗り越えてきた。
1929(昭和4)年、沖縄…