【動画】山口県萩市を拠点に活動する大衆演劇の劇団「鹿島寿」=桜井健至撮影
「踊る神様」と呼ばれていた。
2歳になったころから、晩ご飯が終わると自宅で演歌や歌謡曲をカセットテープで流し、長い日は2時間にもわたって家族の前で即興で踊る――。
鹿島雅さん(23)はそんな子どもだった。
「見てくれないと不機嫌になって。みんなを夜な夜な苦しめていたかもしれません」と笑う。
芸名は、市川雅。大衆演劇「鹿島寿」一座の役者だ。
「旅から旅へ」の巡業はせず、山口県萩市を拠点に、日帰りで公演をする。
座長の鹿島栄さん(88、芸名・市川冨士夫)は、雅さんの曽祖父にあたる。10人の座員のほとんどは家族か親類で、全国でも珍しい4代にわたる一座だ。
鹿島寿は1984年、栄さんが別の劇団から独立して立ち上げた。それから20年近くたったころ、雅さんが生まれた。
「子や孫たちを小さいときから舞台に立たせてきたが、芝居に入り込むのは雅が一番だった。魂が舞台を好きなんでしょうな」
栄さんはそう話す。
生後11カ月で初めて歩いたのは舞台の上。親子の別れの場面では必ず涙をぽろぽろとこぼし、観客のもらい泣きを誘った。いつしか、一座に欠かせない子役となっていた。
しかし、10代の一時期、舞台を離れた。
「美容師になりたい」との思…