Smiley face
写真・図版
鴻池朋子展から。「小さな目は見た」の展示。山の形のジオラマは、鴻池さんが2018年に御巣鷹山の清掃登山に参加したことをきっかけに制作したもの

 こんなことがあるのか――。

 青森県立美術館「鴻池朋子展」(29日まで)の会場で、思わず足を止めた。

 展示室の一角では、山積みのおにぎりや山道の修復作業らしき光景といった一見とりとめのない場面が、布と糸でランチョンマット大に表現されている。

 美術家の鴻池朋子さんは10年ほど前から、展覧会などで訪れる土地で出会った人々から家族や身の回りの思い出などを聞いて下絵を描き、それを元に当人らが集まり、あるいは独りで手芸によって絵画化する試みを続けている。

 並べるとテーブルランナーのようになることから、「物語るテーブルランナー」と呼ばれている。

 冒頭の作品群もその一環で、鴻池さんが縁あって知った小学生の文集に基づいている。

 1985年8月、群馬県の御巣鷹の尾根に日航機が墜落した現場に近い小学校の児童たちは、救助に駆り出された家族から生々しい話を聞き、体験を文集「小さな目は見た」につづっていた。

 鴻池さんは素直な言葉に打た…

共有