Smiley face
写真・図版

アナザーノート 木村裕明記者

 創業138年の老舗企業「カクイチ」を7月の本コラムで取り上げた。紙やファクスが飛び交っていたアナログな中小企業がDX(デジタル化による変革)を進めた結果、企業文化が数年で激変。ノウハウを学ぼうと見学者が絶えないことを紹介したが、カクイチが企業人の注目を集める理由はDXだけではない。もう一つ、ぜひ紹介したいユニークな活動がある。社内で「タスク」と呼ばれている活動だ。

ニュースレター「アナザーノート」

アナザーノートは、紙⾯やデジタルでは公開していないオリジナル記事をメールで先⾏配信するニュースレターです。レター未登録の⽅は⽂末のリンクから無料登録できます。

 タスクとは、会社の経営課題に関する特命事項を5人1組のチームに与え、3カ月間で課題の解決に取り組んでもらう仕組みのこと。会社を変える原動力になる独特の仕組みだと多くの企業の注目を集めていて、誰もが知る有名企業の関係者からノウハウを教えてほしいという依頼が相次いでいる。

3カ月限定のチームに特命

 タスクチームのメンバーは、11ある事業部の社員、人事・総務など間接部門の社員、全国の販売拠点や工場のスタッフなど、全社員から組織横断で選ばれる。ごちゃまぜの混成チームをつくるのがミソ。タスクに与える特命事項や、3カ月で達成をめざすゴール、メンバーの人選は経営陣が事前に考え抜いて決める。

 チームのメンバーは月に1回、活動成果をスライドにまとめて経営幹部に報告する。最終報告会では社長や取締役と向かい合って5人が並び、成果をアピールする。高い評価を受けた報告は課題の解決策として実行に移され、事業化されるものもある。

 「似たような取り組みだな」。カクイチのタスクについて初めて聞いた時に連想したのは、日産自動車が1990年代末に設けたクロス・ファンクショナル・チーム(CFT)だった。倒産寸前まで追い込まれた日産に仏ルノーから乗り込んだカルロス・ゴーン元会長が導入した再建手法だ。

 日産の凋落(ちょうらく)の…

共有