環境省は20日、東京電力福島第一原発事故で汚染された土地の除染で出た土を保管している中間貯蔵施設(福島県大熊町、双葉町)で、土からしみ出す水を処理するシステムに不具合があったと発表した。不具合は昨年9月に起き、今年4月からは委託業者も知らないまま水処理を続けていた。川に放流する直前の測定結果から、セシウムなどの放射性物質は漏れていないとしている。
同省福島地方環境事務所によると、不具合があったのは、同施設内の8区域の一つ「大熊1工区」の浸出水処理施設。
保管中の除染土はシートなどで囲まれているが、少しずつ水が出る。水は集められて、セシウムなどの放射能濃度が検出下限値(1リットルあたり6・5ベクレル)未満だったら放流し、高かったら、放射性物質を取り除く装置に送水する。
不具合は、この送水先を決める弁で起きた。高濃度が測定されたら弁が自動で切り替わり、放射性物質を除去する装置へ送水するが、昨年9月から自動切り替えができなくなっていたという。
そのため、当時、処理を請け負っていた鹿島環境エンジニアリングは、高濃度が検出されたら手動で弁を切り替えるルールを設けた。だが同社は、不具合や新たなルールについて環境省などに報告していなかった。
今年4月に新たな業者が処理を引き継いだが、不具合を知らされず、半年の間、当初の設定通り弁の自動切り替え機能が働いていると誤解したまま運転を続けていた。
この業者が9月に別の箇所を点検していたとき、弁の不具合に気づいた。
同事務所によると、水処理は1週間に1回約10トンを扱い、処理施設の稼働時間は1回につき数時間という。弁より下流にも放射性物質の測定ポイントはあるが、放流を止めることはできない。もし、弁の不具合が起きている間に、放射能の濃度が高い水を処理していたら、誤って放流される危険があったかどうかについて、同事務所は「現在の業者も測定結果を監視し、異常があればポンプ自体を止める態勢になっていたため、放出されることはなかった」と説明している。
同省によると、この水処理施設は運用開始から5年間、放射性物質が検出されたことはなく、周辺環境への影響はないと判断できるという。
同省は不具合の原因を調べるとともに、中間貯蔵施設の全8区画9施設でも同様の不具合が起きていなかったか、10月末までに点検する。
同省は中間貯蔵施設にある除染土を2045年までに県外で最終処分すると約束している。同省は今回の件について、「重く受け止め、再発防止を徹底する」としている。(波多野陽)