Smiley face

【動画】フランスの高齢者施設で、コミュニケーション「パロ」を使って高齢者のケアにあたっている=山田史比古撮影

 「人魚姫」や「みにくいアヒルの子」など、数々の童話を生み出したアンデルセンが生まれたデンマーク・オーデンセ市。

 日本からの観光客も多く訪れる中心部から、少し離れた郊外に、デンマーク技術研究所(DTI)ロボット部門の施設がある。

 「ここは、パロの公式な修理工場です」と、DTIロボット部門のシニアコンサルタント、スサ・シュミットさん。作業台の上には、修理のため、本体部分と「毛皮」部分に分離されたパロが1体、置かれていた。

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アザラシ型のセラピーロボット「パロ」

 パロは、日本の産業技術総合研究所(産総研、茨城県つくば市)が生み出したアザラシ型のコミュニケーションロボットだ。身体性のAI(人工知能)を搭載。毛皮をなで、話しかけることで、パロも鳴き声などで喜んだような反応を示し、「飼い主」の好みも学ぶ。相互作用を通して関係性を築いていく。

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 故障しないよう改良を重ねてきたパロも、乱暴に扱われれば壊れてしまう。「修理工場」には、デンマークだけでなくヨーロッパ各地から、パロが送られてくる。フランスやドイツ、スペイン、オランダ、ノルウェー……。必要な部品は、日本から取り寄せている。

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「修理工場」では、本体と「毛皮」部分が分離された状態のパロが作業スペースに置かれていた。部品は日本から取り寄せているという=2024年9月11日、デンマーク・オーデンセ、山田史比古撮影

パロの導入決めたデンマーク 論文は900近く

 福祉国家として知られるデンマーク。2006年から2年かけ、国の資金提供で首都コペンハーゲンの認知症センターがパロの効果を検討した。本人のコミュニケーションを引き出す効果があるパロ。同国が「パーソン・センタード・ケア」として掲げる、認知症の人を一人の人として尊重し、その人の立場にたったケアを行うとの理念とも合致するとして、導入を決めた。

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