ラクサリーフ、スペアミント、トレビス、フェンネル……。普段聞き慣れない作物だが、実は大阪でも栽培されている。田畑が少ない大阪の都市農業では、細かい需要に目をつけてニッチ(隙間)を攻める農家が活躍している。(吉川喬)
近鉄富田林駅から徒歩10分。国道近くの雑居ビル2階にベトナム食品店「ショウキュウ ティエンベイカー」の赤い文字が現れる。店内の冷蔵庫にはパクチーやタイバジル、スペアミントといった東南アジアで好んで使われる野菜が所狭しと並ぶ。オーナーの内海将樹さん(25)が府内の農地で育てた野菜だ。
内海さんが東南アジア野菜の栽培を始めたきっかけは2020年5月、富田林市内で自転車の荷台に段ボール箱を積んで移動するベトナム人集団を目にしたことだ。理由を尋ねると、ベトナム食品の買い出しのために八尾市の専門店まで往復約40キロを行き来しているという。当時は専門店が少なく、長時間移動を余儀なくされていた。
富田林はベトナム人住民が多い地域だ。市によると、中小のものづくり企業の技能実習生や語学学校の留学生として来日するベトナム人が多い。内海さん自身がベトナム出身の妻・チャンズンさんと当時から付き合っていたこともあり、内海さんの中で「困っている人は多いはず。助けになってあげたい」という思いが募った。
内海さんはまず、働いていた父親の和食店でベトナムで使われる調味料を売り始めた。予想以上に客が集まり、「こんなに需要があるなら、人助けをしながら商売が成り立つかも」。同年11月に食品店を開業した。
記事の最後で、東南アジア野菜の風味と清涼感を味わえるパクチーのおひたしの作り方を紹介します。
輸入した東南アジアの野菜も扱ったが、輸送中に傷むため、届くころには状態が悪かった。「ならば自分でつくろう」と、祖父の農地を使って21年から栽培を始めた。
そこからが、苦難の連続だった。
パクチーやノコギリコリアン…