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渡船に乗り込み沖之島に向かう住民と、船頭の一田誠士郎さん(中央)=2024年8月20日午後0時54分、香川県土庄町小江、内海日和撮影
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 香川県最大の島・小豆島の北西にある土庄町小江地区に、小さな船乗り場がある。わずか100メートル先の対岸に見える集落は、約50人が住む沖之島だ。

 沖之島はかつて、瀬戸内海の島から島へ渡るさまを歌った「瀬戸の花嫁」そのままに、婚礼の日に花嫁衣装で小船に乗る光景が見られたことでも知られる。

 長年、船だけが頼りだったこの島と小豆島の間に、ようやく橋がかかろうとしている。

 沖之島で生まれ育った漁師の島本一則さん(70)は、高校時代には手漕ぎボートで海を渡り、自転車に乗りかえて小豆島内の高校に通った。

わずか100メートルの海、もしもの時の障害に

 船で2分ほどで渡れる距離でも、陸続きでないための不便なことは多い。夜間や荒天時に渡船は出ない。島本さんは「救急車もよっぽどじゃないと呼ばなかった」。急病人と荒天が重なると、命がけの判断となる。

 災害時もそれは同じだ。島内に住む消防団員は2人。消火栓やポンプはあるものの、大規模な火災には対応できない。

 船の最終便は午後6時のため、中高時代に思うように部活ができなかった子どもも少なくない。子育てのためにと小豆島に移り住んだり、結婚を機に島外に家を構えたりする若い世代も多く、島内の高齢化は著しい。

 沖之島と小豆島間の架橋構想は50年ほど前からあった。だが、事業費が壁となり、浮上しては立ち消えになった。

 2013年、離島振興法の離…

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