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強力なX線を生み出す実験装置「Zマシン」。米サンディア国立研究所にあり、高電圧に伴う放電が見えている©Sandia National Laboratories

 地球に衝突する小惑星の軌道を核爆弾によってそらす――。SF映画「アルマゲドン」で描かれるような方法は有効だとする論文を、米国の研究者らが23日、科学誌ネイチャー・アストロノミーに発表した(https://doi.org/10.1038/S41567-024-02633-7)。上空で爆発させるのがカギで、プラネタリー・ディフェンス(地球防衛)の手段になるという。

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 地球の軌道に近づく小惑星は約3万5千個あり、そのうち2千個以上が「潜在的に危険」として監視対象だ。衝突する恐れは今のところないが、小惑星は毎年2千個近く発見されている。事前に衝突を回避する方法は確立されていない。

X線でガス噴出、軌道がそれることを確認

 米サンディア国立研究所のネイサン・ムーア博士(物理学)らは、小惑星の近くで核爆発を起こした時の効果を実験した。石英や融解シリカでできた模擬小惑星に、核爆発で出るX線を照射したところ、瞬時に表面が溶けて、ガスが時速250キロで噴き出し、模擬小惑星が反動で動く様子を確認した。

 この結果を本物の岩石に当てはめると、直径4キロほどの小惑星なら、上空約2キロの距離から核爆発によるX線を浴びせることで軌道をそらせる可能性があるとわかった。

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米サンディア国立研究所のネイサン・ムーアさん©Sandia National Laboratories

 小惑星の衝突を防ぐプラネタリー・ディフェンスの試みは、米航空宇宙局(NASA)が宇宙で実証済みだ。2022年に探査機DART(ダート)を、直径160メートルの小惑星にぶつけ、軌道を変えることに成功した。

 ただ、この方法はピラミッドにバスをぶつけるようなもの。軌道はわずかしか変化しないため、地球衝突コースからそらすには、何年も前から探査機をぶつけなければいけない。

 発見が遅れて衝突まで猶予がないかもしれないし、探査機をぶつけてもびくともしない巨大さかもしれない。「その時の唯一の実行可能なシナリオが核爆弾による軌道変更だ。小惑星を押しのけられる」とムーアさんは取材に答えた。

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