あらゆる場においてカスタマーハラスメント(カスハラ)を禁止する――。
東京都議会で4日、そう定めた条例案が可決、成立した。カスハラ防止に焦点をあてた条例は、全国で初めて。背景にはサービス業の現場で、カスハラによる被害が深刻化している実態がある。
都内のスーパーで副店長を務めていた男性(47)はかつて、客から「購入した豆腐が腐っている」との苦情を受けた。
商品とレシートを確認するため、店舗から電車で30分ほど離れた客の自宅を訪ねた。しかし話を聞くと、自宅にあった豆腐は購入からすでに2週間以上が経過していたという。
「時間が経てば腐って当然ではないか……」。そんな思いを抱いたが、立場上、低姿勢を崩せない。すると、その場で土下座を要求されたという。
- 自治体カスハラ、何分で対応打ち切り? マニュアル作り悩ましく
ほかにも、店で酒に酔った客に暴力を振るわれて眼鏡が壊れたり、カゴを投げつけられたりしたこともあったという。
男性は「以前は『カスハラ』という概念すらなく、泣き寝入りしていた就業者も多かったと思う」と振り返る。
都内の区役所で介護保険に関する窓口業務に従事していた女性(52)は、要介護認定されなかった区民から「死ねというのか。お前が死ね」とののしられた。「お前を辞めさせてやる」とすごまれたこともある。
「私たちも人間……」怒鳴られる職員、現場でやまぬ被害
カスハラによる被害に歯止めがかからず、東京都が全国に先駆けて防止条例の制定に動き出しました。その内容や今後の課題、専門家の視点をまとめてお伝えします。
窓口対応に手間取っていた別…