Smiley face
写真・図版
鉄道アナリストの川島令三さん=2024年9月2日午後2時38分、東京都八王子市、岡田玄撮影

 つなぐべきか、つながざるべきか――。あらゆるものがつながる今、つながることで便利になることがある半面、使いづらくなったなあと感じることもある。明治以来、日本国内をつないできた鉄道から教訓が得られるのではと思い、鉄道アナリストの川島令三さんを訪ねた。

  • ネットで世界中がつながった社会 日常脅かすリスクに立ち向かうには
  • 不信が連鎖する日常 作家・呉勝浩さんが考える「一番簡単な処方箋」

 ――鉄道は網の目のようにつながっていますが、鉄路すべてを一本につなげたいという「野望」のようなものがあるのでしょうか。

 「ありますね。その一端は、新幹線の号車に表れています。上り下りは東京駅が基準ですが、1号車は東京駅から下る方面の先頭ではなく、西側の先頭車両です。これは北海道から鹿児島に至るまでを一本で結ぶ発想です」

 「例外は北陸新幹線です。北陸新幹線は東京側が1号車になっているので、仮に東京駅で東海道新幹線と直通した場合、西向きが1号車になって整合性が成立します。しかし、もし新大阪駅で山陽新幹線と直通した場合は、山陽新幹線は博多側、つまり西向きが1号車のため、東京側が1号車の北陸新幹線と号車番号が反対になってしまいます」

 「東北新幹線と東海道・山陽新幹線が一本につながれば、ニーズもそれなりにあるでしょうし、鉄道がおもしろくなります。実際、国鉄時代には計画があったのですが、分割民営化で棚上げされました」

 ――東北新幹線と東海道・山陽新幹線をつなぐことはできるのですか。

 「東京駅の東海道新幹線のホームは3面あるのですが、そのうちの東北新幹線寄りの1面(14、15番線ホーム)は、東北新幹線との共用ホームにする予定でした。今でも構造上、やる気になればできるんです。東海道と山陽は国鉄時代から直通運転で、JRになっても続いています」

「野望」を阻んだ上下意識

 「ただ、東北と東海道新幹線で直通は実現していません。今では、東北新幹線と東海道新幹線ではドアの位置がずれているため、ホームドアの問題もあって実現は難しいと思います。JR東海とJR東日本の関係もありますし」

 ――在来線で直通運転は増えています。これも「野望」なんですか。

 「在来線の直通運転も、国鉄時代から計画はありました。ただ、機関区や労働組合の意識の問題もあって、当時は実現しませんでした」

 ――どういうことですか。

 「当時は、日本で鉄道開通以来の伝統を引き継ぐ誉れある東京機関区には最新の車体が配備され、地方に行くほど古い車体でした。機関区ごとに上下意識があり、東京機関区に古い車体は入れるなという声があった。そういう意識は労組にもあったんです」

 ――そんなことがあったとは。直通運転については、どうお考えですか。

 「ケース・バイ・ケースですね。乗り換えいらずで便利になる面もある一方、悪い面もある。つないだ方がいいこともあれば、つながない方がよい場合もあります」

直通運転は本当に便利なのか

 「例えば、高崎線・宇都宮線…

共有