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春日人麻呂と基永師、2人の作家の伎楽面が並んだ特別陳列=2024年10月3日、奈良市登大路町、今井邦彦撮影
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 飛鳥~奈良時代に盛んだった仮面劇「伎楽(ぎがく)」。今も伝わる異国風の面には、作者名が明記されたものがある。古くから注目されていた「基永師(きえいし)」、そして近年、存在が明らかになった「春日人万呂(かすがのひとまろ)」の作品を集めた特別陳列「東大寺伝来の伎楽面」が、奈良国立博物館(奈良博、奈良市登大路町)で開かれている。

 東大寺と正倉院には、奈良時代の大仏開眼供養で使われた物を中心に約200点の伎楽面が伝わっている。その作者としては、裏面の墨書から「将李(しょうりの)(相李)魚成(うおなり)」「基永師」「延均師(えんきんし)」らの名が知られていた。

 こうした作者名のある伎楽面を調査してきた奈良博の山口隆介主任研究員は2年前、かつて東大寺に伝わり、今は個人が所蔵する太孤父(たいこふ)という老人の面の裏に、「春日人万呂作」と書かれているのを見つけた。

 春日人万呂という作者はこれまで知られていなかったが、調べると、作者名が薄れて読めなかった東大寺所蔵の伎楽面に2点、人万呂の名が書かれていたと推定できるものが見つかった。

 伎楽面作家・人万呂について知る手がかりは、まだ他にはない。「作品3点が並ぶ機会を作り、人万呂の存在を広く知ってもらおう」と考えた山口さんは、太孤父と、同じ人が所有する基永師作の酔胡従(すいこじゅう)(ペルシャ王の従者)を奈良博で展示させてもらうことにした。

 東大寺からは人万呂作の2面と、基永師作の酔胡王(酔ったペルシャ王)1面、酔胡従3面(1面は24日から展示)を出展。さらに文化庁所蔵の基永師作とみられる酔胡従1面(11月29日まで展示)も加わり、2人の伎楽面作家の作品がそろう特別陳列が実現した。

 今月26日~11月11日に東西新館で開かれる「第76回正倉院展」では、正倉院宝物から捨目師(しゃもくし)という作者の酔胡従を出展。さらに東大寺ミュージアム(同市水門町)でも、捨目師作の伎楽面5面を今月18日~来年2月7日に展示する予定だ。山口さんは「ぜひ見比べて、各作者の個性を感じてほしい」と話している。

 特別陳列「東大寺伝来の伎楽面」は12月22日まで、奈良博なら仏像館第9室で。仏像館の観覧料(一般700円、大学生350円)で見られるほか、正倉院展のチケットでも観覧できる。(今井邦彦)

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