ライフワークに区切りをつける。白石加代子は今秋、1992年に始めた「百物語」シリーズのアンコール公演第5弾で全国を巡る。今回で語り納め。一度終えた朗読劇を続けたのは、「大事な日記のようなもの」との再会がきっかけだった。
恐怖をキーワードとする様々な物語を朗読するシリーズで、2014年にいったん終えた。同年まで22年間分の台本は、自宅の本棚の一角を占めている。
いつも素通りするのに、あるとき、手にとって開いた。そこには、白石自身が構成・演出の鴨下信一に言われたことを全て書き込んでいた。いますぐやっても通用しそうなほど、具体的だった。
16年にアンコール公演を始めた。「記憶だけだと、いつの間にか薄くなってくかも。台本という物があることはとても、重く感じました」
白石は89年に劇団SCOTを退団。その後、鴨下と百物語シリーズに取り組み始めた。「お互いに相手を理解していくうちに……」。言葉を手探りし、「同志として、やりやすくなっていった」。
鴨下の意見を消化しつつ、観…