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婚姻届には、婚姻後に夫婦が「夫の氏」か「妻の氏」のどちらを選ぶか記入する欄がある

 衆院が解散され、事実上の選挙戦が始まる中、議論の行方が注目されるテーマがある。結婚したときに夫婦で別の名字を選べる「選択的夫婦別姓」だ。導入に前向きな姿勢を示していた石破茂首相は、自民党総裁選に勝利するや、主張を後退させた。「この問題は日本が多様性を尊重する社会かどうかの試金石だ」。そう語る日本弁護士連合会副会長の田下佳代弁護士(長野県弁護士会所属)に聞いた。

 ――日弁連は6月に選択的夫婦別姓制度の導入を求める決議を発表しました。

 私たちは1993年からこの制度の導入を求めてきました。改めて決議を出した大きな要因は、渕上玲子会長が4月に就任したことです。75年の歴史の中で初めての女性会長で、この制度の導入を重点政策として掲げています。

 96年に法制審議会が導入を提言してから、国会で議論が進まないまま、28年が経ちました。その間に国連の女性差別撤廃委員会からは3度にわたり、女性が婚姻前の姓を保持できるよう法整備を勧告されています。世界でも、夫婦同姓を義務づけている国は他に見当たりません。

 経団連など、経済界からも導入を求める声が上がっています。世論調査の結果などでも選択的夫婦別姓制度を容認する割合が高くなっています。それでもやはり多くの方に関心を持っていただかないと前に進んでいかない。制度の早期実現に向け、今こそ広く世論に訴えていかないといけないと考えています。

憲法が保障する幸福追求権

 ――決議では、これは人権問題だと訴えています。作成にあたり、田下副会長も多くの意見を出されたそうですね。

 夫婦同姓を義務づける民法7…

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