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看板を取り外す前に、両親の遺影を抱えためいと並んで高橋国明さん(左)は頭を下げた=2024年10月13日午前10時7分、静岡県沼津市、田中美保撮影

 ようやく店の看板を降ろすことができた――。

 静岡県旧清水市(現静岡市清水区)の一家4人殺害事件で袴田巌さん(88)を無罪とした静岡地裁の再審判決が確定したことを受けて、確定審で袴田さんが凶器の刃物を購入したとされた刃物店が13日、店の看板を下ろした。すでに2011年に営業をやめたが、「無罪確定するまでは外せない」と、店主だった高橋国明さん(74)=群馬県板倉町=は心に決めていた。

 刃物店の名は菊光刃物店。事件当時の1966年は両親が営んでおり、確定審で高橋さんの両親が検察側の証人として法廷に立った。当時学生だった高橋さんは「自分たちは事件に巻き込まれた被害者の立場だ」と思っていた。

 事件後、頻繁に店を刑事が訪れ、両親や手伝いの親戚が応対した。ある日、集金の手伝いから帰った高橋さんは、店先で刑事たちが帰るところに鉢合わせた。親戚の話では、刑事たちは、みどりさんらに20~30枚ほどの顔写真を並べて「知っている者はいないか」と尋ねたという。「お母さんも、誰も見覚えはないと答えたよ」。親戚は高橋さんにそう説明した。

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