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出版された本を手に並ぶ崔江以子さん(中央)ら共著者たち=2024年10月12日、川崎市川崎区、北野隆一撮影

 在日コリアン女性に対し「祖国へ帰れ」と書いたネット上の投稿がヘイトスピーチにあたるとして昨年、投稿者に賠償を命じる判決が言い渡された。勝訴した原告らは判決から1年の節目に、裁判や反差別の取り組みを「『帰れ』ではなく『ともに』――川崎『祖国へ帰れは差別』裁判とわたしたち」(大月書店)の題で書籍化。川崎市で12日に出版記念会を開いた。

 川崎市の在日コリアン3世、崔江以子(チェカンイヂャ)さん(51)は、茨城県の40代男性による「日本国に仇(あだ)なす敵国人め。さっさと祖国へ帰れ」とのブログへの投稿で精神的苦痛を受けたとして損害賠償を請求。横浜地裁川崎支部は昨年10月12日の判決で、投稿が不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)にあたると認め、男性に約190万円の賠償を命じた。

 「祖国へ帰れ」との表現について判決は「日本で生まれた原告が地域社会の一員として過ごした人生や存在自体を否定するもの。名誉感情や個人の尊厳を害した精神的苦痛は非常に大きい」と認定した。控訴はなく一審で判決は確定した。

 記念会では共著者らが登壇。裁判を担当した神原元弁護士は「『帰れ』という言葉がどれほど人を傷つけるか。この言葉をなくすため多くの大人が努力したことを、次世代の子どもたちに伝えたい」と述べた。

 崔さんは「多くの在日の人から『帰れという言葉に自分も苦しめられた。だから判決はうれしかった』と聞きました。私の勝利ではなく、その言葉に痛めつけられたみんなの勝利だと感じます」と語った。(編集委員・北野隆一)

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