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 絵本「まゆとおに」のまゆは、やまんばの娘です。活発な力持ちで、さまざまな冒険をしていきます。お母さんのやまんばはのっぽでおおらか。このすてきなやまんば親子はどうやって生まれたの? 人気の絵本シリーズのヒミツを作者の富安陽子さんにうかがいました。

 私は子どものころ、妖怪と近所づきあいをして大きくなった気がします。一緒に暮らしていた祖母がいっぱい妖怪の話をしてくれたんです。「昔、対馬で暮らしていたころ、うちのお店におかつさんというねえやを雇ったら、実はタヌキが化けていてね……」と名前や地名入りでした。父も伯母もそんな話が得意で、ほらふき一家だったんですね。妖怪好きになりました。

 日本文学などを学んでいた大学生の時、「やまんばのにしき」という民話を読みました。やまんばが赤ちゃんを産むというので、おばあさんが村代表でお祝いを持っていって産後の手伝いをすると、ふしぎな錦の反物をもらって帰り、幸せに暮らしましたという話です。

「まゆとおに」のあらすじ

 「まゆとおに」(福音館書店、2004年)まゆはやまんばのむすめ。山で出会ったおにはそうと知らず、なべで煮て食べてやろうとします。たくらみに気づかないまゆは、おにを手伝おうと力持ちの能力を発揮して……。本作を含む「やまんばのむすめまゆのおはなし」シリーズの発行部数は6作累計で36万4千部。新作「まゆとブカブカブー」と「やまんばのむすめ まゆのおはなしすごろく」が10月に発売された。

 人をとって食うというやまんばがお母さんになったら、どうやって子どもと暮らすんだろう。そんなことを考えて、やまんばのお母さんと一人娘の話を書こうと思いたちました。でも、やまんばのイメージがなかなか思い浮かびません。

 そんな時、通学中の山手線で向かいの席に座った女性を見て「やまんばだ!」と。しゅっとして、ノースリーブのワンピースを着て、おだんごヘア。一気に想像がふくらみました。

 当時、福音館書店が刊行して…

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