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写真・図版
相原啓介弁護士=2024年10月9日、岩波精撮影

 膨張を続ける東京で、人知れず厳しい状況に置かれている人たちがいます。総選挙で「未来」や「希望」が語られるなか、そこからこぼれ落ちる現場を知る人たちに、課題や政治に欠けているものを聞きます。

 精神疾患で入院している患者を殴り、違法に手足を拘束する――。八王子市郊外にある精神科「滝山病院」で昨年2月、看護師らによる虐待が発覚しました。患者を支援してきた弁護士の相原啓介さん(57)に、この事件が浮き彫りにした問題について聞きました。

本当に「行き場がない人たち」なのか

 もし内科や外科で患者さんが虐待されたら、大問題になりますよね。でも、精神科だと「仕方がない」とされ、不合理な差を設けて異なる扱いをする。それは差別です。

 滝山病院の入院患者さんは「ほかに行き場のない人たち」と表現されました。たしかに、合併症などがあって受け入れ先が限られていた人もいます。しかし、私が支援したケースでは、患者さんのSOSを受けてからだいたい3カ月で転退院できています。アパートを借りたり、グループホームや高齢者施設に移ったり、本人の希望で別の病院に転院したケースもあります。探せば受け入れ先はあるのに、「行き場がない人たち」と決めつけるのは偏見です。

 滝山病院を「必要悪」という…

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