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市街地でのヒグマ対策について学ぶ、知床ネイチャーキャンパスの参加者たち=2024年9月24日、北海道斜里町、伊藤恵里奈撮影
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現場へ! クマ対策の最前線(4)

 9月下旬、北海道・知床。道端のあちこちでカメラを手にした観光客が、川を凝視していた。ヒグマが出てこないか、待ち構えているのだ。

 その脇を全国から集まった高校生や大学生を乗せたバスが通り過ぎていく。世界自然遺産・知床で環境保全などに取り組む知床財団の職員が、「実際にクマが出ると、見物する車で『クマ渋滞』がおきる。近づきすぎる人もいるので対応に追われる」と語り、苦笑いした。

 若者たちは、知床自然大学院大学設立財団の実習「知床ネイチャーキャンパス」の参加者。野生動物保護管理の分野で人材を養成しようと、2016年に始まった実習だ。

 世界有数の高密度でヒグマが生息する知床では、ヒグマは観光の目玉であり、脅威にもなりうる。学生たちは、温泉街で知床観光の拠点の一つウトロの市街地を囲む電気柵やクマが荒らさないよう措置したゴミステーションなどを見学した。

 参加した松井瑞嬉さん(22)は、酪農学園大学で獣医学を専攻する。「今の日本では、獣医学は家畜・ペットの学問とされているが、野生生物や環境にも貢献できる方法を考えていきたい」と話す。

 5.9%――。環境省が発表した、全国の都道府県で鳥獣対策を担う行政職員約3600人のうち、保護や管理に関する専門的な知見を有する人の割合(24年度)だ。野生動物の影響が、農林水産業や生態系など多岐にわたるなか、対策にあたる職員が必要な知識や技術を有していない状況にある。

 財団代表で、日本の野生動物…

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