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朝日俳壇

俳句時評 岸本尚毅

 歌壇俳壇面で月1回掲載している、俳人の岸本尚毅さんによる「俳句時評」。今回は二人の「超ベテラン」俳人の句を鑑賞します。

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 この椅子にはや二日はや三日かな

 宇多喜代子「雨の日」より。「二日」「三日」は新年の季語。一月二日と三日のことだ。同じ椅子に座したまま二日になり、はや三日になった。正月の気分は薄く、時の過ぎゆく速さを思わせる。

 一九三五年生の作者は句歴七十年。〈杖一歩わが脚一歩薫風裡(り)〉からも察せられるが、「体調を崩してしまい、存分な心身で句作に向かうことがむつかしくなりました」(あとがき)という。そんな状態から生まれる作品は平淡でありつつ、生の深淵(しんえん)を見せてくれる。

 冬日和この世の老婆溶けそう…

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