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校歌を歌う東洋大姫路の選手たち=2024年10月27日、ほっともっと神戸、大坂尚子撮影
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 (27日、高校野球 秋季近畿地区大会準々決勝 東洋大姫路4―0大阪学院大)

 「これくらいは出来る子たちですから」

 東洋大姫路(兵庫)の岡田龍生監督(63)は、そう言って目を細めた。

 打っては要所で連打が出て9安打4得点。投げてはエース阪下漣が完封。投打がかみ合って大阪学院大に快勝し、近畿4強に進んだ。

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 2019年の全国選手権大会で優勝した履正社(大阪)を35年間率いた後、22年4月に東洋大姫路に移った。母校は「古豪」と記事で書かれるようになっていた。ショックだった。

 「履正社ではそんなことはなかった。何とか『強豪』と言ってもらえるようにせなあかん」

 目標ができた。

 東洋大姫路は、第59回全国選手権(1977年)には全国制覇を果たしている。春夏あわせて甲子園出場は20回。だが、ここ10年は岡田監督の就任直前の22年の選抜大会に出た1度きりだ。

 今春の選抜大会で2年連続準優勝だった報徳学園をはじめ、社や明石商、神戸国際大付。兵庫県内に力を付けた高校が増え、結果が出ない時期が長く続いた。

 履正社では、選手に教えすぎないことで自主性を伸ばしてきた。東洋大姫路では、「(周りに)手本がないから僕が示していかないといけなかった」。勝つために必要なことを一つ一つ教えていった。

 例えば、リードしている中盤以降の守備では、無理して併殺や好捕を狙うのではなく、確実にアウトを1個ずつ取ること。打撃では、カウントによって球の待ち方を変えること。細かく伝えた。

 主将の渡辺拓雲(たくも)は「意識が変わって、打線がつながるようになった」。この日もアドバイスを生かした。六回2死二塁で回ってきた打席では、2球で追い込まれながらも「追い込まれてからは低めを捨てる」と説かれたことを実践した。フルカウントに持ち込み、最後は甘めの変化球を左中間を破る適時二塁打にした。

 教わった野球に確かな手応えを感じながら、選手たちは笑顔で校歌を歌った。近畿で6枠ある来春の選抜大会出場は確実だ。

 岡田監督は、もっと先を見据えている。「強豪と言われるには、安定した成績を残さないといけない」。まずは11年夏以来遠ざかる甲子園での勝利。そして、全国制覇へ。脱「古豪」を目指す日々は続く。(大坂尚子)

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