つい5分ほど前まで人がまばらだった路上に人だかりができた。門から駆け出してきた女児が「ママ!」と叫びながら、母親に飛びつく。
10月中旬、中国・広東省広州市の小学校前。昼時に集まっているのは保護者やお手伝いさんだ。この地区では児童が昼休みを自宅で過ごすため、昼と夕にお迎えがくる。
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中国ではよく見かけるほほえましい光景だが、この日はどこか空気が重い。校門の外に可搬式の鉄柵が並べられ、ヘルメットに防護盾やさすまたを携えた警察官が立つ。そばには警察犬もいる。
深圳の20日後の児童刺傷 中国では記事削除も
人口1800万人超の広州市の中心部で、北には市の検察庁舎、南には省の検察庁舎がそびえる。治安の中枢とも言える場所で、この6日前、子どもが襲われる事件が起きた。近くの深圳市で日本人学校の男児が刺されて死亡した事件から、わずか20日後のことだ。
直後に保護者に取材した香港紙・明報によると、事件はこう起きた。
昼休みを終えて多くの児童が学校に戻ろうとしていた午後2時。校門の近くを歩いていた小学生2人と家事手伝いの女性が突然、刃物を持った男(60)に切りつけられた。男には前科があり、その処分に不満を持っていたらしい。現場には検察当局への恨みや「子どもに罪はない」と容疑者が書いたとみられる白い布が残されていたという。
不満のはけ口として無差別に子どもを狙ったとみられる。3人は命に別条はなかったが、小学5年の女児は心臓付近を刺されかけたそうだ。
一方、中国大陸ではこの報道を閲覧できない。明報によると、広州市の地元メディアが現場を取材した記事もすぐネットから削除された。警察発表には路上で3人が切りつけられたとあるのみで、現場が小学校の前であることも、負傷者に児童がいることも触れられていない。
地元の人はどう感じているのか。
孫を学校に送りにきた女性は…