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郷土芸能の神楽に使う面をつくる神楽面師「広運」こと佐藤高広さん。面は作るだけでなく、集めもする。「純粋に好きだから」=2024年9月27日午後5時4分、宮城県栗原市、御船紗子撮影

連載「凄腕しごとにん」 神楽面師・佐藤高広さん

 宮城、秋田、岩手の3県にまたがる栗駒山のふもとに、「南部神楽」と呼ばれる郷土芸能が伝わる。この土地で生まれ育ち、自らも神楽を踊りながら、舞い手がかぶる面を作り続ける。

 家族に神楽を踊る「神楽衆」がいたわけではないが、物心ついたころから色々なものを太鼓に見立ててたたき、母親に面をねだった。中学生からは地元で南部神楽を伝える一派「中野神楽」に加わった。「神楽さ天から背負(しょ)ってきた」と言われた。

 初めて面を作ったのは小学生のころ。お気に入りの面を手本に彫刻刀で彫った。色を塗ってほしくて仏具店へ持ち込んだら、店主が「ゲタさ持ってきたのか?」。ショックで面はその場で割ってしまった。

 中学生になり、岩手県一関市の面師に弟子入り。師匠は面を作る様子を見せてくれなかったが、自作の面を持ち込み、表情の作り方や仕上げの工程など、ひとつひとつ教えを請うた。高校を卒業し、家業の畳店を継ぐため埼玉の専門学校へ入った時も、寮に面と彫刻刀を持ち込んだ。

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神楽面の製造工程(左から)。丸太から木材を切り出し、樹皮をはがし、形を整え、面の輪郭を削り出す。顔のパーツを彫ったら紙やすりで磨き、貝をすりつぶして作った「胡粉(ごふん)」を塗る。髪や目を描き、紅を差したら出来あがり=2024年9月27日午後3時13分、宮城県栗原市、御船紗子撮影

 2001年、師匠の雅号「一運」と自身の名前から一文字ずつとり、神楽面師「広運(こううん)」として独り立ちした。以来、23年間で500枚以上の神楽面を手がける。今年2月には全国で活躍する面師3人とともに、東京・銀座で合同展を開くまでになった。

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