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事件後、精神科につながり治療を受けながら更生をめざす女性

 関東地方にある精神科病院の診察室。近況を尋ねた医師に、20代の女性は答えた。

 「このあいだ誕生日だったんです。それで……取り乱してしまい、睡眠薬をオーバードーズ(過剰摂取)してしまいました」「生まれなきゃよかったって。そしたら事件も起こさなかったのに……って」。目から涙があふれた。

 妊娠を誰にも相談できず、自宅の浴槽で出産。直後に子どもを沈めて殺害し、殺人と死体遺棄罪に問われ、執行猶予付きの有罪判決を受けた。精神科への通院は、刑務所ではなく社会の中での更生が必要と訴えた弁護士が裁判所に提出した更生支援計画に沿ったものだ。

 裁判で明らかになったのは、女性がいくつもの困難を抱えながら、支援につながることなく、長く孤立した状況に置かれていた事実だった。シングルマザーの母親に育てられ、小学5年で学校に通い始めるまで無戸籍だった。母親からは虐待を受けていて、性被害やいじめを受けても相談できなかった。さらに精神鑑定で、社会生活への適応能力が平均よりやや低い「境界知能」であることも明らかになった。

 腕には細い筋状の傷が残る。「ずっと精神的に不安定で、つらいことがあるとリストカットしていた。でも精神科に行ったことはなかった。裁判になって初めていろんな人に助けてもらった」

望まぬ妊娠に悩み、孤立出産に至る女性たちがいる。どう子と女性の命を守り、支援するのか。韓国と日本の取り組みを追った。

 医師は「つらい時、困った時…

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