徳島県美波町を流れる全長約16キロの日和佐川は、昔から川遊びやアユ釣りを楽しむ人に愛されてきた豊かな清流だ。
その下流にある農業用の堰(せき)に、小さな「魚道」が設けられている。1メートルほどある堰の段差を、稚アユなどの小さな魚が越えられずに遡上(そじょう)できなくなっていたのを改善するため、遡上時期に合わせて設置する「可搬魚道」と呼ばれるものだ。
この装置を考案した香川高等専門学校(高松市)の高橋直己准教授(40)=河川工学=と学生らが9月、現場を確認に訪れた。
「あっ、今、上ってる!」
堰の壁面に沿って斜めにかけられた幅約50センチ、長さ約3メートルほどの木製の魚道を、小さなハゼたちが次々に上る。その様子を見て、一行は胸をなで下ろした。
「上流に上れれば、大きく育ち、正常に産卵できる。魚道ができるまでは、川が本来持つポテンシャルが生かされていなかった」と高橋准教授は振り返る。
従来の魚道は大がかりで課題も
魚道とは一般に、農業用や治…