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ヒロシマ・ピース・センターの鶴衛理事長(左)から表彰状を受け取った森重昭さん。中央は妻佳代子さん=2024年11月17日午前11時57分、広島市中区、副島英樹撮影
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 平和活動に貢献した人に贈られる谷本清平和賞の贈呈式が17日、広島市内であり、今年の受賞者に選ばれた被爆者で歴史研究家の森重昭さん(87)に、表彰状や「平和の牌」などが贈られた。森さんは「これまでの苦労が認められてうれしい」と感謝の言葉を述べた。

 森さんは会社勤めの傍ら、手弁当で原爆犠牲者の調査をする中で、米兵捕虜12人が原爆の犠牲になったことを突き止め、書籍も出版。それが2016年のオバマ米大統領との対面にもつながった。その後も、相生橋の上で息絶えた米兵の遺族を広島に招いて追悼供養を営むなど活動を続けてきた。

 授賞理由では、「戦争というものは国籍も関係なく犠牲者が出る。原爆の悲劇に国境はない」という世界平和の原点ともいえるメッセージを森さんが訴え続けてきたことが挙げられている。

 妻の佳代子さん(82)と登壇した森さんは謝辞のあいさつで、原爆を開発したマンハッタン計画に参加した米国の数学者ジョン・フォン・ノイマンや、未知の放射線による人体影響を研究した玉川忠太・広島大教授を引き合いに出しながら、「被爆から80年近く経ってもまだ分からないことがいっぱいある」と強調。かつてキノコ雲の下にいた影響が、今になって自分の体に出ていることを実感していると語った。

 そして最後に、「原爆は思っているよりはるかに恐ろしい。二度と使われないようにしなければならない。絶対に原爆は使わせてはいけないと強く言いたい」と訴えた。

 同賞は今年で36回。原爆孤児らの支援に取り組んだ谷本清牧師(1909~86)の功績をたたえ、公益財団法人ヒロシマ・ピース・センターが87年に設けた。贈呈式と併せて、外国人留学生による日本語の「世界平和弁論大会」も開かれた。(編集委員・副島英樹)

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