平城京跡から東に向かって山を越えると、茶畑と田園ののどかな風景が広がってきます。奈良市田原地区は戦前、映画の舞台になったことがあります。奈良県大淀町教育委員会の松田度さんが、今回はある1本の映画から、奈良の山村の歴史と文化を考えました。
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JR奈良駅からバスに揺られて東へ。約30分で奈良市田原(たわら)地区に着きます。標高は400~500メートル。大和盆地と比べ2~3度涼しい高原地帯です。大和茶の里として知られ、現在約800世帯が暮らしています。
平城京から一山越えた田原には、天智天皇の子で万葉歌人の志貴皇子(しきのみこ、春日宮天皇)、その子・光仁天皇、そして、723年に死去した、歴史書「古事記」の編者・太安萬侶(おおのやすまろ)など、奈良時代の王族や官人の墓がつくられました。1979年に偶然墓が見つかり、一躍時の人となった安萬侶でしたが、今は茶畑のなかで再び眠りについています。
この地は歴史的に「添上郡(そえかみぐん)田原庄(郷)」と呼ばれ、中・近世の南都と名張・伊勢方面を結ぶ街道の要所でした。
約90年ぶりに里帰り上映会も
明治22(1889)年には…