4年前の9月。
蒸し暑い日の夕方だった。黒いスーツに身を包んだ男性(32)は、滋賀県の集合住宅のとある一室の前に立った。
人をだますという罪悪感、警察に捕まるかもという不安と恐怖が頭を占めた。
でも、ギャンブルで作った借金がある。
「やるしかない」
インターホンを押し、警察を名乗った。
スマートフォンを通話状態にし、片耳につけたイヤホンから聞こえてくる「指示役」の言葉をそのまま復唱する。
10分ほどのやりとりを経て、高齢の女性からキャッシュカード2枚を受け取った。
特殊詐欺で被害者から現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」。入り口は、X(旧ツイッター)経由で応募した「闇バイト」だった。
北陸地方で生まれ育ち、地元の大学を卒業した後は食品関係の企業に就職した。土日勤務で残業も多く、友人と遊ぶ機会も減っていった。
仕事のストレスと寂しさを紛…