展覧会の冒頭、若い男性の自画像がずらりと並んでいる。少し気負ったようにあごを上げ、こちらを見据える目をしたものが多い。傍らのキャプションには享年24、享年25、享年23と記されていて、息をのむ。第2次世界大戦の戦地で、あるいはそこでの病や傷で命を落とした画学生や、画家になりたての青年たち。長野県上田市の戦没画学生慰霊美術館「無言館」(1997年開館)の所蔵品の数々だ。
中村萬平によるこの「霜子」も、無言館が所蔵する。劇的な光と影の表現で、椅子に座る女性を画面いっぱいに描写。東京美術学校(現・東京芸術大)で2年後輩だった故・野見山暁治は、先輩の画風を「太い筆で荒々しく描きなぐる」と評している。
中村は妻となる霜子をモデル…