アイルランドで29日、下院総選挙(任期5年、比例代表制)の投票が始まった。定数は前回2020年から14増の174議席。事前の世論調査では、三つの政党が激しく競っている。開票は30日に始まり、12月1日夜までには大勢が判明する見通し。
アイルランドでは現在、ともに中道右派の統一アイルランド党(FG)と共和党(FF)が、緑の党と連立を組んでいる。選挙の実施はFGの党首でもあるハリス首相が決断。だが、FGの支持率はそれ以降落ち込んでいる。
地元紙などが20~23日に実施した世論調査によると、支持率はFGが19%で、FFが21%。野党第1党で、カトリック系武装組織アイルランド共和軍(IRA)の政治部門を母体とするシンフェイン党(SF)が20%だった。
世論調査と実際の開票結果が大きく変わらなければ、FGとFFは再び連立政権の樹立を模索するとみられる。だが、SFが大きく議席を伸ばし、政権を担うことになれば、南北アイルランド統一の議論が再燃したり、ウクライナに対して同国が望まない形での即時停戦を呼びかけたりと、内政、外政ともに方向性が変わることになる。
アイルランドは法人税率が15%と低く、多くの多国籍企業が拠点を置く。経済は比較的好調で、欧州司法裁判所の9月の決定で米アップル社からは140億ユーロ(2兆2400億円)の追徴税も受け取ることになり、選挙戦では使い道も議論された。
ただ、平均住宅価格は10年間で2倍近くになり、特に都市部で安価な住宅がないことが大きな問題になっている。同時に、アイルランドに来る移民や難民申請者が増えていることも政治問題化している。