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 室町時代に能楽を大成し、「風姿花伝」を著したことで知られる世阿弥。奈良盆地の中央部に位置する奈良県田原本町は、その世阿弥と関わりの深い土地です。奈良県大淀町教育委員会の松田度さんが、世阿弥と大和との関係について紹介します。

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 大和盆地のど真ん中、奈良県磯城郡田原本町といえば、弥生時代の大集落である唐古・鍵遺跡、『古事記』の編纂者・太安萬侶(おおのやすまろ)ゆかりの多(おお)神社。最近では、宮古平塚古墳から太鼓の埴輪(6世紀)が出土して話題になりましたが、もう一つの魅力が「能楽」です。

 日本を代表する古典芸能「能楽」は、歌舞劇・能と喜劇・狂言の総称で、明治時代以前は「サルガク(申楽・猿楽)」といいました。大和国では室町時代、有力な社寺で神事芸能「式三番(翁サルガク)」を演じる集団が「座」を結んで活動していました。その有力集団の一つが、磯城郡結崎(川西町)を本拠とした結崎座です。

 結崎座出身の世阿弥元清(1363~1443)は、舞台芸術としてのサルガク能を大成した人物です。「観世座」を創座した父・観阿弥清次(1333~84)とともに京都へ進出。室町幕府3代将軍・足利義満の庇護をうけ、能役者として名声を得ました。

不遇の晩年

 ところが、義満死後は不遇を…

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