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家族経営のワイナリー「クラマ・ミルチェシュティ」の畑では、労働者が収穫したブドウを荷台に投げ込んでいた=2024年9月26日、モルドバ、中川仁樹撮影

 鉱山を再利用したトンネルを観光用の電気自動車(EV)に乗って進むと、ワインのたるやボトルがぎっしりと並んでいた。ドイツのメルケル前首相や中国の江沢民・元国家主席ら、この地を訪れた多くの有名人の顔写真が世界地図とともに飾られた部屋もある。

 旧ソ連構成国で、ウクライナとルーマニアに挟まれたモルドバ。その中部クリコバにある国有ワイナリー「クリコバ」を訪ねた。地下ワイン貯蔵庫は全長120キロ、深さ100メートルに及び、世界有数の規模を誇る。気温は13度前後に保たれ、貯蔵能力は4千万リットル。ロシアのプーチン大統領ら個人の貯蔵庫もあるという。教会やレストランなども整備され、モルドバ屈指の人気観光スポットでもある。

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モルドバの地図

 ガイドが流暢(りゅうちょう)な英語で観光客を歓迎した。「本物の地下ワイン都市へようこそ。クリコバは小さな国モルドバの美しい真珠です」

ワイン造り 5千年以上の歴史

 5千年以上のワイン造りの歴史があると言われるモルドバは、同じ旧ソ連のジョージアとともにロシアへの主要なワイン供給国だった。1991年に独立し、2年前には欧州連合(EU)加盟候補国となった。最近の選挙では親欧米派と親ロシア派がせめぎあったが、ワイン産業ではいち早く「脱ロシア」が進む。

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国営ワイナリー「クリコバ」の広大な地下貯蔵庫を観光客を乗せて走る電気自動車(EV)=2024年9月25日、モルドバ、中川仁樹撮影

 モルドバが世界に目を向けることになったのはなぜか。

 皮肉にも、そのきっかけは2…

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