声優や歌手などが、声を無断で利用され、AI(人工知能)の技術で勝手にしゃべらされる。そっくりの声が知らない曲を歌い、ときに卑猥(ひわい)な言葉まで言わされる。そんな「声」の無断利用が拡大する中、日本政府は新法や法改正に消極的だ。昨年の知的財産推進計画では「必要に応じて、見直しの検討」をするとしていたが、今年6月に発表された計画からはその文言も消えた。

 「かなりつらい」「がっかり」――。今年の知財計画が発表されると、「声の権利」の確立を求めてきた声優や団体のあいだには、失望が広がった。今年の計画で、法整備が進むことを期待していたが、むしろ見直しや新法の動きは縮小したからだ。

 「政府が生成AIを強く推進している中で、『権利の保護』というのは厄介な存在のように扱われ、置き去りにされたままになっている」。そんな声も聞かれた。

 「『NOMORE無断生成AI』有志の会」のメンバーで、声優の福宮あやのさんは、「人が自分の声で何を表現するかというのは、人間の尊厳にかかわる問題だと思う」と語る。

 生成AIの発展によって、これまでの法が想定していなかったような「声」の無断利用の被害が増加している。

コナンやテイラー・スウィフトそっくりの声で…

著名人の声を再現した音声で、文章の読み上げができるサイト。俳優のトム・クルーズや、ミュージシャンのテイラー・スウィフトなどの名前が並ぶ

 「20万を超える声を提供」…

共有
Exit mobile version