銃を持った2人の兵士、戦闘機に乗る兵士――。ガザへの攻撃が続く3月末、どこかポップで可愛らしさもある「ジブリ風」のイラストを、イスラエル軍がSNSに投稿し、非難が集まった。

イスラエル軍のX公式アカウントが「私たちもジブリの流行に乗ろうと思う」という言葉とともに投稿した画像

 この1カ月余り、生成AI「ChatGPT」を使って作られた「ジブリ風」の画像は、SNSを席巻している。3月末に導入された新機能で「○○風の画像」などといった指示によって、すぐにイラストが生成されるようになった。米ホワイトハウスの公式X(旧Twitter)アカウントも、移民を逮捕する場面をジブリ風のイラストにしたり、トランプ大統領とバンス副大統領をジブリ風にしたイラストとともに、移民に関する発言を投稿したりしている。

 政府や軍は、これまでも様々なコンテンツをプロパガンダに用いてきたが、AIの発展は、その手法にどんな影響を与えていくのか。近現代史研究者の辻田真佐憲さんに聞いた。

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 ――ジブリ風の画像が政治的メッセージに利用される動きについて、どのように見ていますか

 ジブリアニメというのは、もはや世界的なコンテンツです。それに似たものを生成して、政治や軍事に対する親しみを生み出し、受け入れられやすくする。AIが使われたという点を除けば、プロパガンダの領域では古くからある手法ではあります。

 第2次世界大戦中にも、アメリカはディズニーキャラクターをプロパガンダに用いました。当時から、新たにキャラクターを生み出すよりも、すでに人々に知られ、愛着を持たれている存在を活用する方が、ずっと効果的だったからです。これはアニメに限った話ではなく、俳優や歌手を戦争に導入するのも、同じ理由に基づいています。

 ――歴史上、やわらかく「楽しい」装いをしたプロパガンダは多いそうですね

プロパガンダの威力 AIで大きくなる可能性

イスラエル軍が「私たちもジブリの流行に乗ろうと思う」という言葉とともに、SNSに投稿した画像

 第2次大戦で言えば、日本放…

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