質店「和田屋」のカウンターに設置された音声認識機器。「正確で文字の大きさも調整できて驚き」=2024年8月24日、神奈川県藤沢市藤沢、足立朋子撮影

 話したことがリアルタイムで文字で表示される「音声認識機器」を活用したバリアフリーの実証実験が、神奈川県藤沢市の商店街で始まっている。

 企画した一般社団法人「4Hearts(フォーハーツ)」(茅ケ崎市)の代表で、聴覚障害がある那須かおりさん(43)がめざすのは、これまで感じてきた「心の低温やけど」をさせない社会だ。

「筆談より話が弾む」

 実証実験は県の協働事業に採択され、藤沢駅北口の商店街が協力した。10店舗に8月から9月末までの2カ月間、AIを利用した音声認識機器が置かれている。

 カウンターが広い質店では透明スクリーンに字幕を投影するタイプ、客の靴選びに寄り添う靴店では持ち運びできるタブレットなど、メーカー各社から各店に合う機器を提供してもらっている。

 靴店「RiCCO」の廣田豊さん(44)は筆談でやりとりしてきた顧客が10人ほどいるが、今回の実証実験で雑談が増えたと感じている。「筆談だと必要最低限のやりとりになりがちだけど、話が弾むね」

 利用した人にアンケートを実施し、コミュニケーションの障壁解消に向けて課題を探る。

 先天性の聴覚障害がある那須さんは、幼少期に厳しい言語訓練を受けて一般の学校に進み、企業に就職したものの、絶えず疎外感に悩まされてきた。

 見た目では分からない障害。障害者枠で採用されたのに、声による指示や配慮の欠けた会議が悪気もなく続き、転職を重ねても行き詰まった。

那須かおりさん=2024年8月24日、藤沢市藤沢の市民活動推進センター、足立朋子撮影

 企業の中でキャリアを築くことに限界を感じ、産業カウンセラーの資格を取って独立。地元の手話サークルで出会った仲間らと2020年に「4Hearts」を立ち上げた。

筆談に負い目、会話わからず…

 ヘッドホンを用いて聞こえに…

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