デイビッド・ブルックス
私は、人工知能(AI)が生活のあらゆる面をより良いものにする可能性について、概して楽観的だ。例えば、科学研究、医療診断、個別指導、そして私のいまのお気に入りの使い方である休暇の計画作りなどでの活用だ。しかし、AIには悪意ある誘惑もある。つまり、努力なしに優れた成果が得られるという幻想だ。それは人々に、努力せずに上手に考えることができるという錯覚を与える。申し訳ないが、そんなことは不可能だ。
この誘惑の正体を暴いた最近の研究がある。サンプル数が非常に少なく、まだ査読も受けていないので、注意は必要だ。しかし、直感的に正しいと思える内容になっている。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のナタリア・コスミーナ氏率いる研究チームは54人の参加者に小論文を書かせた。あるグループはAIを使って書き、別のグループは検索エンジンを使って書いた。最後のグループは昔ながらの方法で、すなわち自分の頭だけを使って書いた。
AIを使って書いた小論文には、名前、場所、年、定義などの具体的な言及が多かった。一方、自分の頭だけで書いた人たちは、それらの言及が60%少なかった。ここまでは問題ない。
自分で書いた文章を引用できなかったAI利用者
しかし、AIを使って書かれ…