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陶磁器の博物館で「無語仏」の写真を撮るために並ぶ人たち=2025年3月21日、江西省景徳鎮、小早川遥平撮影。デザイン・郭溢

 中国で都会の生活に疲れた若者が今、こぞって集う町がある。陶磁器の一大産地として世界史に登場し、日本でもその名を知られる江西省の景徳鎮だ。1千年以上の歴史を誇る町が斜陽期を経て、再び脚光を浴びている。

【前回はこちら】あふれる社畜感? 「班味」漂う、上海―北京の高速鉄道に乗ってみた

受験や結婚といった人生の転機や、経済やライフスタイルの変化を、中国の人びとはワンフレーズの漢字で巧みに表現しています。そんな新語・流行語が映し出す、中国社会のいまを読み解きます。

 景徳鎮の陶磁器を展示する博物館。中国独自の文化を再評価して取り入れる「国潮」というブームに乗り、連日多くの観光客が訪れる。「開門と同時に6階に急げ」というネット上の攻略法をもとに訪れると、長蛇の列ができていた。

 みんなの目当ては「無語仏」と呼ばれる、仏像の形をした小ぶりな陶磁器。1930年代に作られた、様々な表情をした18体の羅漢像の一つで、作り笑いを浮かべたような表情が「班味(くたびれた勤め人感)」を感じさせると、2年前にネットで話題になった。写真を満面の笑みに加工し、「下班啦(退勤だ)」と添えるなどしたスタンプが現在もSNSで流行している。

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景徳鎮の「無語仏」の写真を加工して作られたSNSのスタンプ。仕事でくたびれた様子(左)や退勤(中国語で「下班」)時の喜びを表している=中国のSNSから

 スマホを向ける多くは若い女性だ。「福建省から有休を取って来ました」。会社員の阮さん(32)は骨董(こっとう)品や美食が集う夜市やSNS映えするスポットを5日間かけて巡る。「ここはゆっくりとした時間が流れていて『去班味』できます」。班味をぬぐい去るという意味だという。

10年連続で流入超過

移住した若者たちに取材すると、中国社会の今を映すある共通点が浮かんできました。「景漂」の意味とともに、記事後半で紹介します。

 仕事の息抜きにとどまらない…

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